松下耕作曲・谷川俊太郎作詩の曲。タイトル通り「走る」をモチーフに曲がどんどん展開していく。「息の続く限り~」と主線がある一方で「走る」が背景でも繰り返されているので、走っているという緊張感が曲を通して持続される。通常、「走る」という言葉はそのまま「走る」という概念を指すが、この曲ではその概念よりも日本語特有の「はしる」という語感から来る独特のリズム感や質感の方が重要なように思われる。つまり、この曲を英語に翻訳して演奏するとしても、ここでの「走る」は”run”や”dush”ではなく「はしる」でなければ、この臨場感は伝えられない。谷川先生が持つ日本語の言葉遊びのセンスから生まれた詩を松下先生がその本質を汲み取って合唱表現に昇華させたからこそ出来た表現である。
松下先生の作られた曲の割には、あまり歌われていない曲だと思う。個人的にはもっと流行って欲しいし、一般向けの演奏会でも積極的に取り上げられて良い曲だと考えている。合唱を歌う上で、日本語は欧米の言語に比べて歌として発声・表現しづらいという認識が一般的ではある。しかし、こういった曲が今後、作曲・演奏される事で日本語の歌への苦手意識が緩和されていくと思っている。
動画は「耕友会」様から拝借いたしました。この動画の指揮をされている方が作曲者の松下耕先生です。私も松下先生の指揮で歌わせて頂いたことがありますが、とてもとてもエネルギッシュな方でした。この方の指導を受ければ誰もが合唱好にのめり込んでしまうと思います。