前書き
所々厳しい感想を書きますが、演劇を初めて10年も経っていない若僧の独断と偏見で書いていることをご承知の上で読まれて下さい。逆に、この感想に対して意見や批判等があれば各々Twitterやブログ等で発信して頂きたいですし、是非それを拝読したいです。基本的にはロクコレを通して、参加団体の方々が演劇に意欲を持って、福岡演劇界が盛り上がる事を期待しています。
演劇空間ロッカクナット『友だち、』
30分程度の作品。2人芝居。階段を舞台にした公演。階段は狭く10人くらいしか観れない。私は上の階から立ち見で観劇。演劇舞台を見下ろすというのは初めての経験だったし、それだけでも結構楽しめた。ロッカクナットはやはり舞台美術へのこだわりが他団体とは段違いだった。階段には立方体を切り刻んだオブジェが点々とあり、天井には無数の赤風船。劇中も「春の空は薄い水色」とか「秋はペタリと赤い」とか、色に着目したセリフがふんだんに使われる。
内容はかなり抽象的なもので、物語として起承転結がある感じではないのだが、仲良くも悪くもない2人の関係性が、辺りに散りばめられた風船みたいな感じで、心地良かった。
がらくた宝物殿『寒いし不安』
25分程の作品。4人の芝居。私が大好きな団体。福岡演劇のバカリズムのような存在。もはや憧れ。なんというか、代表の植木さんは演劇人として、思考力もセンスも高いのに、それをコントというスタイルで隠しているような印象を受ける。今回もそのような感じ。
それにしても会場は寒かった。屋上での公演だったのだが、私はロッカクナットの後で風船を貰っていたので、風とかが吹いた拍子に割れてしまわないか不安だった。
冒頭では、会社の新人とその上司が屋上にやってくる。新人は、お茶漬けの中の海苔やあられなどをピンセットで別々に分ける非生産的な仕事を任される。新人は拒否も質問さえもすることなく、モクモクとやり始める。上司が財布が落とすと、悪魔と天使がやってきて「盗もう」「盗まない」的な茶番が行われるが、新人はそれも無視して仕事を続ける。この上なくシュール。どこからそんな発想が出てくるのだろうか。
そして、その悪魔と天使の葛藤の中で突然に「不安」という言葉についての話が出てくる。
「自分の善を常に推し進めるということは、一方で悪に堕ちてしまうことである。だから人間は善に脅かされていて、自分の悪を自覚したとき不安になる。善悪がある限り不安からは逃れられない。でも、不安があるから心の中に天使と悪魔が存在し、あなたは一人ではない。」
といった話。それまでの茶番劇との温度差が凄まじい。劇場では他の観客と一緒に笑って観ていたものの、反面、話についていけなくて不安になった。正直、善悪についてそこまで深く考えた事はないし、それをこういったシュールなコントにぶっ込んでしまうアイディアも半端じゃないな…と。恐るべし。
ただ、「寒くて不安」というタイトルだったので、寒さに関連して劇中で不安な事が起こるのかと思いきや、特に寒さに関する話は出ない。最後に新人が「寒っ」と呟くくらい。観客も役者もただただ寒い思いをしただけ。なので、演劇は面白かったものの普通にホールでやってほしかったというのが本音。
SKYSCRAPER『BOUGIE?』
30分程度の作品。5人の芝居。清々しい程に下品な言葉が行き交う作品。お触りアリのキャバクラで働く若者達のお話。題材が題材なので好みが別れると思われるが、私としてはかなり好きな部類。
ただ、私はそういうお店に行った事がない。大音量のEDMとビカビカのLEDの中、ボーイ達が「ポンパ、アタックおめでとう」とか「セカンドフリーでお願いします。」と聞き慣れない言葉を喋っているのが、私にはシュールに思えたし、カルチャーショックを受けた。本当の所は全然分からないが、恐らくとてもリアルに描かれているのだろう。
前半では、キャバクラでのあるあるエピソード(?)が描かれ、コント的な空気感なのだが、中盤から突然、男性器を痛めつけて男を殺す女のお話になる。暗いというより、ドギツい。何だかんだで犯人が見つかるのだが、見つけた犯人に他の女性達が共感して他の男も殺してしまう。今回のロクコレの短編集の中で一番裏切られた展開だった。男女の恨み辛みは恐ろしいと思う反面、ちゃんとお話として楽しめたし、不思議な爽快感があった。ただ、作演の「男を懲らしめたい」という思いが前に出過ぎていて、各キャラクターの動機とか人間関係みたいなものは荒削りな印象。そして、男性達の演技の詰めが甘かったと思う。それらの部分が突き詰められていたらまた違う見え方になっていただろうなと思う。
ロクコレ短編フェス 総括
ここまでが私が観たロクコレ短編フェス。合計10団体。どっと疲れた。出演者や運営の皆様はもっと疲れただろう。本当にお疲れ様です。(残念ながら劇団焚火と期間クリエイションは観れなかったが、)こんなに立て続けに演劇を見続けたのは初めてだ。いい感じにジャンルもテイストもバラけていて良かったし、自分が想像していたよりも面白いと思える作品が多かったので満足度は高い。枝光アイアンシアターのホールだけではなくて、練習場、多目的室、屋上、階段とあらゆる空間で演劇をやっているのも面白い取り組みだと思った。逆に言えば役者と観客さえいればどこでも演劇ができるのだと実感した。
ただ、そういった場所での演劇は頭を働かせないと楽しめないと思った。大体の演劇は素舞台なので、映画やアニメとは違って、役者の演技などを見て、そこから観客が能動的に状況を掴んでいかなければいけない。
しかし、役者が説明をしすぎてしまうと興ざめだし、説明が無さ過ぎたり、雑だったりすると観客はついて行けなくなってしまう。その困難に挑戦して行っているのはやはり素晴らしい事だなと思う。是非、来年もロクコレ短編フェスをやって欲しいし、その時には自分もまた何らかの形で参加するかもしれない。
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